平成19年度においては、本研究課題である朝鮮半島の植民地近代にかかわる著書・論文などの先行研究を収集し、本研究の位置づけを明らかにした。 それはすなわち朝鮮半島においてナショナリズムに影響される親日対反日という二項対立的な研究手法からの脱却を本研究の観点に据え、植民地時代の朝鮮半島において中間に位置した人々がどのように考え、どのように行動したのかという問題を本研究において設定することができた。それにより、着目するアクターとして、植民地期における朝鮮人工リート層が浮上し、そのなかでも朝鮮半島の植民地時代に東亜日報社などを立ち上げた金性沫らを中心とする東亜日報グループの足跡を追うこととした。 彼らの評価は収集した資料のなかでも二分されているため、個人のライラヒストリーと当該期における事象とから事実関係の把握が必要とされた。 そしてひとつ重要なこととして彼らがアジアにおいて近代化を先んじた日本へと留学していたことが挙げられる。当時の学校史などにアジアからの留学生に関する記述なども見られ、彼らの行動の一環を垣間見ることができた。彼らは日本で学び、そのときにできた人間関係を通じて植民地化した朝鮮半島社会で力を持ち始めたのである。 今後の課題としては、彼らが日本留学で培った近代観がどのように植民地社会に影響を与え、スポーツとつながっているのかを検討する資料の収集が最重要となる。そのため韓国へのフィールドワークをはじめ、関係資料の収集・分析に努める。
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