研究概要 |
本研究ではシミュレータを用いた訓練において,被覆アーク溶接とTIG溶接における技能の共通性に着目し,両技能が効果的に向上する訓練計画の構築を目的としている. 昨年度の被験者を用いた溶接シミュレータによる訓練実験から,シミュレータにおいて溶接棒の3次元位置が把握しづらいという問題点が指摘されたため,シミュレータの視覚提示プログラムを見直した.仮想物体の陰影設定と,仮想物体の影が他の仮想物体に映るように変更することで,この問題を解決した.また,溶接部に形成される溶接ビードの形状により溶接作業評価を行うため,XYテーブルとレーザー変位計を組み合わせた3次元形状測定器を製作した.この測定データから溶接ビードの高さや幅などの情報を抽出し,作業者の技能の定量評価が可能となった.以上の訓練システムと作業評価方法を用いて実験を行った,被験者は,(1)実際の溶接で被覆アーク溶接訓練後にTIG溶接訓練を行う,(2)実際の溶接でTIG溶接訓練後に被覆アーク溶接訓練を行う,(3)実際の溶接で被覆アーク溶接とTIG溶接訓練を交互に行う,(4)シミュレータで被覆アーク溶接訓練後にTIG溶接訓練を行う,(5)シミュレータでTIG溶接訓練後に被覆アーク溶接訓練を行う,(6)シミュレータで被覆アーク溶接とTIG溶接訓練を交互に行う6グループに分けられ,訓練課程の技能の変化が評価された.この結果から,訓練する溶接法の順序の違いによる技能の変化は,実際の訓練とシミュレータにおいてほぼ同じ傾向が得られた.これにより,実際の作業における有効な訓練順序は,シミュレータによる訓練でも有効であるといえる.
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