有酸素性運動は生活習慣病予防に効果的な手段であり、様々な要因によってその効果が生み出される.その要因の一つとして、近年脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが注目を浴びている.特に高分子量のアディポネクチン濃度上昇が運動効果を介在している可能性がある.しかしながら、高分子量のアディポネクチン濃度に及ぼす一過性の有酸素性運動の影響は明らかではない.そこで、本研究では中年肥満男性を対象として、血中アディポサイトカイン濃度に及ぼす一過性の有酸素性運動の影響について検討した. 対象者は9名の中年肥満男性(年齢、55.2±2.4yr、BMl、27.7±0.6kg/m2)であった.対象者に60分間の有酸素性自転車運動(50%peak oxygen uptake)を負荷し、運動中20分間隔で採血をおこなった.血液からホルモン(カテコラミン、インスリン)、代謝産物(遊離脂肪酸、グリセロール)およびアディポサイトカイン(総アディポネクチン、高分子量アディポネクチン、lL6、TNFa、RBP4)濃度を測定した. 血中カテコラミンは安静時に比べ運動中で有意に高い値を示した(P<0.05).総アディポネクチン濃度は運動中と安静時で変化はなかったが、高分子量アディポネクチン濃度は安静時に比べ運動開始40分後に有意に低い値を示した(P<0.05).高分子量および総アディポネクチン濃度の比率には、安静時と運動中で違いはなかった.lL6は安静時に比べ運動開始60分後で有意に高い値を示した(P<0.05).TNFa、 RBP4に関しては、安静時と運動時で大きな変化は認められなかった. 以上の結果は、中年肥満男性において一過性有酸素性運動中に生じるホルモンや代謝産物、アディポサイトカインの変化が高分子量アディポネクチン濃度に影響を及ぼす可能性を示している.
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