研究概要 |
〈本年度に実施した研究の具体的内容〉本年度は,パソコン操作課題において人とエージェントが対話するとき,どのように言語・非言語行為をインタラクションの中で配置するのかを明らかにした.まず,人対人と人対エージェントの対話の基礎的特徴を観察し,人対エージェントの対話では人の発話量が少なく,相槌や応答が稀にしか差し挟まれないことを統計的分析によって示した.この振る舞いは一見,相手発話への理解や承認といった聞き手の内的状態の伝達を妨げ,インタラクションの円滑さを妨げる行為であるかのように見える.しかし,詳細なインタラクション分析から,人対人の行為の配置規則において交互に配置される指さしとポインター移動が,人対エージェントのインタラクションでは同時に生じパラレルに配置されることが判明した.これは,理解の証拠を言語行為ではなく非言語行為によって相手に伝達するもので,円滑なインタラクションを補償するものであることを示す.一方,マウスクリックという非言語行為に関しては,人に対するのと同じように,指示発話の後に配置されていた.これは,たとえエージェント相手であろうとも交互に配置すべき非言語行為の種類かおることを示している 〈意義・重要性〉本研究の意義は,人がエージェントを相手にしたとき,対人インタラクションルールの改編を一部行うことを示したことにある.一見非円滑なインタラクションが行われているように見えても,実はそれが自然な動作や発話が困難である人工物を相手にしたときの「円滑なインタラクション」の方式であという重要な知見を得た.
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