CFTR遺伝子の多型とアルコール性慢性膵炎との関連およびその分子機構の解明を行うため、アルコール性慢性膵炎患者65人、健常人100人を対象に末梢血より抽出したDNAを用いて遺伝子解析した。既に翻訳領域の解析は終了しているため、CFTR遺伝子の転写活性に影響を及ぼすと推定される領域(プロモーター領域を含む;翻訳領域の上流約2kb)の解析を行った。その結果、これまでに世界でも報告のない変異-1523G/Aが患者群に1例、-790delTは患者群にのみ3例見つかった。-895T/Gのアレル頻度は健常群で46.9%、患者群で50.7%、125G/Cのアレル頻度は健常群で6.3%、患者群で5.2%であった。それぞれのハプロタイプは、各種多型を持つ患者の遺伝子をpGL4ルシフェラーゼレポーターベクター(プロメガ)にクローニングし、シーケンサーにて配列を確認した。その結果、-895Gと125Cは同一アレル上にあることがわかった。また、-790delTは-895Tと同一アレル上にあることがわかった。コントロールとしては、野生型の配列を持つ遺伝子を組み込んでコンストラクトを作成した。CFTR遺伝子のプロモーター領域の多型が転写活性に及ぼす影響を測定するために、膵導管細胞由来の培養細胞にコントロールのルシフェラーゼレポーターコンストラクトをトランスフェクションし、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼアッセイを行い基準となる活性値を得た。現在、各ハプロタイプのルシフェラーゼレポーターコンストラクトを同細胞にトランスフェクションし、測定値を基準値と比較検討しているところである。
|