研究概要 |
平成20年度は,アクチュエータ束による関節駆動を行う基盤技術の確立を目指し,アクチュエータ束を考慮したモデル化および解析を試みた.単駆動のアクチュエータを束にして使用することで,大きな発生力が得られることを実験的に確認した.しかしながら,複数のアクチュエータを扱うため,アクチュエータの物理特性のばらつきがリンクの運動に影響を与える可能性がある.例えば,アクチュエータとして市販のSMAコイルを使用する場合,適当な長さに切り出す必要がある.したがって,同一の試料であっても,切り出す長さによって物理特性が変化する.この影響を明らかにするために,時間分解能1000HzのCMOSカメラを用いてアクチュエータ束で駆動するリンク機構の運動を計測した.この計測結果より,アクチュエータ束の物理特性のばらつきによって角度制御の精度が悪くなる可能性が示唆された.本機構では,リンクの結合部に粘弾性体を配置しているため,ヒンジ機構のように運動方向が拘束されておらず,三次元的にねじれる可能性がある.そこで,物理特性のばらつきを統計的に考慮した静力学解析を行った.アクチュエータはばねで近似し,剛性係数にばらつきがある複数のばねで剛体の棒を支えているとして解析を行った.その結果,アクチュエータの数が十分大きい場合には,ばらつきの影響が無視できることを明らかにした.解析の妥当性を,形状記憶合金の動特性およびそのばらつきを考慮したシミュレーションを用いて検証した.これらの結果より,結合部に柔軟要素を含む関節機構を制御する場合,アクチュエータの数を十分大きくすれば,そのばらつきを軽減し,制御できることが明らかになった.
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