本研究課題では、共焦点レーザー顕微鏡で撮影した細胞の2次元〜4次元時空間画像から、観察の対象とする細胞内オルガネラ及び細胞骨格の領域を自動抽出するシステムの基本設計及びプロトタイプ開発を行った。 システムは、エンドユーザーが提示した時空間画像内の抽出ターゲット(教師データ)の画像特徴を解析し、システムにあらかじめ用意された複数個の抽出アルゴリズムの抽出精度スコアを算出する。その後、トップスコアを算出したアルゴリズムを用いて大量の時空間画像からターゲット全体の領域抽出を実現するものである。前年度までの研究によって、画像やターゲットに応じて、適宜アルゴリズムを選択する必要があることが明らかになり、本年度は主に、アルゴリズム選択に用いる評価関数の検討を行った。特に我々は、特徴間距離と輪郭形状間距離の2つの尺度の線形結合によって構成される評価関数が、エンドユーザーが示した教師データにより近い抽出を実現できる可能性があることを示した。この結果は現在IEEE国際学会の発表に向け投稿中である。なお、システムは極めて計算量が膨大となることから計算並列化の基本設計・実装も行った。現在までにLinuxクラスタマシン及び理研スーパー・コンバイド・クラスタ・システム(RSCC)によるテストランを完了している。 これらの実現により、時間や場所ごとに変化する細胞内のオルガネラや細胞骨格を、大量の画像から自動抽出することが可能となる。抽出結果を用いることにより、抽出対象を自由視点から観察することのみならず、体積や表面積の計測、他のオルガネラとの位置相関関係などの定量解析が可能となる。また、システムは我々のみならず、細胞生物学者にも使いやすいシステムであるように設計しているため、細胞生物学分野発展の一躍を担えると確信している。
|