研究概要 |
本研究では,探索問題の仕様に相当するプログラムにわずかな記述を追加するだけで,探索アルゴリズムに基づく実行効率のよい探索プログラムを開発可能にする,「ユーザ指向」の探索アルゴリズムライブラリの構築を目指してきた.従来のライブラリの多くが,ライブラリを利用できるような形にプログラムを書き下すことを利用者に強制するのに対し,我々のユーザ指向ライブラリは,そのような強制を利用者に課さないという特長を持つ.平成20年度に得られた成果は次の通りである,まず,ライブラリ構築の基礎である,遅延データ構造lmproving Sequenceを拡張し,不要な計算を生ずることなく,データ構造の終端を確認できるようにした.次に,この拡張が以下の3つの特長をもつことを明らかにした.1つ目の特長は,ライブラリの実装に関する記述性の向上である。従来のlmproving Sequenceに基づく実装においては,データ構造の終端を実行効率よく確認するには,技巧的な記述が必要であった.一方,この拡張に基づけば,ごく自然な記述で,終端を実行効率よく確認できる.実際,この拡張によって反復深化アルゴリズムを,従来よりも簡潔に実装できることを確かめた.2つ目は適用範囲の拡充である.従来のImproving Sequenceでは難しかった,LDS(Limited Discrepancy Search)の実行効率のよい実装が,この拡張に基づけば可能であることを,実際に実装して確かめた.また,このLDSの実装を用いてJob Shop Scheduling問題を解き,ライブラリの適用範囲の拡充を確かめた.3つ目はライブラリの利用に関する記述性の保持である.上述の2つの特長を享受しつつも,従来と同様の柔軟な利用が可能な,ユーザ指向ライブラリを構築することができた.
|