研究概要 |
新たな金融派生商品の評価モデルとその応用に向けて,初年度の本研究は買戻し請求権付き他社株転換社債と償還条項付き為替リンク債の評価についての理論的研究を中心に行った. 買戻し請求権付き他社株転換社債に関して,企業の最適償還政策と投資家の最適買戻し請求政策を明らかにし,企業がいつ償還するのが最適であるのかを判断する最適償還境界,投資家がいつ買い戻し請求するのが最適であるのかを判断する最適買戻し請求境界の定性的な性質を導出した.さらに買戻し請求権付き他社株転換社債の価格が,満期のみに権利行使可能なヨーロピアンタイプの他社株転換社債の価格,早期償還における割引額,早期買戻し請求におけるプレミアムに分解可能であることを示した.また,二項モデルを用いた数値解法によって計算機実験をおこない,買戻し請求権の有無における他社株転換社債の価格変動や最適境界の動きを視覚的に実現し,分析をした.この研究成果を"The Valuation of Callable-Puttable-Exchangeable Bonds"にまとめ,日本ファイナンス学会第15回大会(6月・慶応義塾大学)および22^<nd> European Conference on Operational Research(7月・プラハ)において報告をおこなった. 償還条項付き為替リンク債に関して,投資元本とクーポンが為替レートに連動する債券の評価に取り組んだ.為替リンク債の価格や最適償還境界の定性的な性質を導き,為替リンク債の価格がヨーロピアン為替リンク債の価格と早期償還割引額に分解できることを示した.この研究成果を"The Valuation of Callable Currency Linked Bonds"にまとめ,日本オペレーションズ・リサーチ学会2007年秋季研究発表会(9月・政策研究大学院大学)およびINFORMS Annual Meeting 2007(11月・シアトル)において報告をおこなった.
|