研究課題
本研究では、飼料イネ人工湿地を用いて実際の汚濁河川水を浄化する際、水位や流れ方式が、栄養塩(特に窒素)浄化能力やメタン及び亜酸化窒素の放出量にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、暗渠の活用による表面流と浸透流を組み合わせることによる栄養塩の浄化能力を評価した。また、温室効果ガスの放出について、飼料イネの生長段階にあわせ、中干しや間断灌漑など水管理を行うことによって、土壌中の酸化還元電位を調節し、メタンガス及び亜酸化窒素の放出量を評価した。実験系として浄化施設の浸透流出流量と表面流出流量の比を4:1(A系)と1:1(B系)を設けた。2つの系とも5、6月に連続湛水をした後、中干しを行った。その後、B系において9月から一定の水位を保つ連続湛水のことに対して、A系において、排水口の位置を調節することによって、間断湛水をおこなった。その結果、B系の酸化還元電位(-5cm)は中干し期間を除いて、殆ど-150mVを維持していた。一方、A系では、湛水期間の酸化還元電位はB系と同じ程度であったが、間断湛水期間中にはEhの値は-150〜+450mVの範囲で変動していた。2つの系とも浸透流出水の全窒素濃度が低く、除去率が高かったが、A系の全体の除去速度(406mg-N/m^2/d)はB系(326mg-N/m^2/d)より高いことがわかった。これは浸透流の割合が高いほど、根圏への窒素量が増加し、吸収量や根圏での脱窒量が増えたためと考えられる。また、表面流と浸透流を組み合わせた飼料イネ湿地からの温室効果ガス放出量は、一般の水田や湿地からのものよりも低く、温暖化への寄与は小さいことが示唆された。しかし、亜酸化窒素は大気中への放出は低かったが、浸透流出水から放出されたことが明らかになった。今後、人工湿地や農地の温室効果ガスを評価する際、浸透流出水からの亜酸化窒素の排出量を考察する必要があることが示唆された。
すべて 2008
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Water, air, & soil pollution 191
ページ: 171-182
用水と廃水 50(2)
ページ: 41-50