本研究では、導電性高分子薄膜や有機薄膜とカーボンナノチューブからよる複合薄膜の作製や配向を行うためのパターニングを行いセンサーなどデバイス応用のための基礎的な研究を行った。 まず、カーボンナノチューブをエレクトロアクティブなモノマーであるテルチオフェンを溶媒中に分散させ、三電極法により薄膜を作製した。次に、ギャップ電極間に配向した薄膜を作製するために、ギャップの両端を作用電極とした電解重合を行った。最後に、ギャップの片方を作用電極、他方を対電極とした、ギャップ電極間の電解重合を行った。実験結果より、それぞれの実験法により薄膜の形成過程が異なることが分かった。三電極法では、堆積した膜へのドーピング-脱ドーピングによる電流の大きな上昇がみられ、エレクトロアクティブな導電性高分子が作製できたことがわかった。他の場合では、三電極法の場合ほど大きくはないが、薄膜の形成を示す電流の増大が見られた。いずれの場合においても、カーボンナノチューブがある場合の方が大きな電流が流れており、堆積されたポリチオフェンの膜中にカーボンナノチューブが取り込まれて導電性が増加していることが分かった。 また、フタロシアニンなどの有機半導体とカーボンナノチューブからなる分散溶液も作製し、これを用いたパターニングや超薄膜の作製も試みた。この時、カーボンナノチューブと水溶性フタロシアニンを吸着させることにより、有機半導体とカーボンナノチューブのナノコンポジットを溶液中で可溶化し、マイクロコンタクトプリンティング法、ディップペンナノリソグラフィ法によりパターン化、配向化を試みた。いずれの場合も、良好なパターン・配向が形成されていることがAFMなどにより確認された。 これらの成果を元に、今後は複合薄膜にした時の基礎物性の詳細な評価と、ガスセンサーやFETデバイスへの応用について検討する。
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