研究課題
真核細胞は、複製ポリメラーゼのブロックを解除する仕組みを備えている。この仕組みは、乗り越え修復(translesion synthesis; TLS)と乗り換え修復(template switch; TS)に大別される。出芽酵母では、複製ポリメラーゼの進行が阻害されると、ポリメラーゼ結合因子であるPCNAのリシン164がRad18(E3)-Rad6(E2)複合体によってモノユビキチン化される。モノユビキチン化PCNAは、損傷乗り越え型(TLS)ポリメラーゼを誘導し、TLSを促進する。一方、TSでは、Rad5(E3)-Ubc13-Mms2(E2)複合体が、モノユビキチン化されたPCNAをさらにK63型ポリユビキチン化する。TSは、このポリユビキチン化依存的に、ポリメラーゼの姉妹染色分体の新生娘鎖への乗り換えを促進すると想定されている。これまでの研究から、我々はヒトSHPRHおよびHLTFが、酵母Rad5の機能的ホモログであることを見いだした。本研究では、shRNAによる発現抑制および遺伝子欠損マウスの作製によってSHPRHとHLTFの機能解析を行った。その結果、SHPRHとHLTFは、PCNAのポリユビキチン化を介して、複製ポリメラーゼの停止解除を促進することを明らかにした(PNAS 2008論文発表)。一方、重篤な複製ポリメラーゼのブロックやDNA二本鎖切断は、相同組み替えによって修復される。我々はこれまでに、脊椎動物UBC13が、TSのみならず、組み替え修復においても重要な役割を持つことを明らかにした。本研究では、DNA二本鎖切断の修復の際にUBC13と共役して働くユビキチンリガーゼの一つRNF8の遺伝子破壊DT40株を作製し、表現型解析を行った。これにより、RNF8が相同組み替え修復を促進することを明らかにした(Keystone Symposia 2009学会発表)。
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