本課題では、有機系廃棄物起因の熱分解炭素による、ガス改質反応と直接還元反応について、熱分解炭素の結晶性を指標に基礎データの収集を行うとともに、これら反応のメカニズムに関する検討を行い、工業化を目指した技術基盤を確立することを目的としており、本年度は下記の項目について検討を行った。 【I】熟分解炭素の結晶性評価 従来のコークスを用いた製銑プロセス研究において、コークス中固定炭素の結晶性は、カーボンソリューションロス反応に大きな影響を及ぼすことが報告されており、本プロセスを通じて生じる熱分解炭素の結晶性も重要な因子であることが推察される。本年度、本研究では熱分解炭素の結晶性に特に注目した基礎研究を行うため、代表的な有機系廃棄物として、木材およびRDF(Refuse Derived Fuel:廃棄物固形燃料)を乾留し精製した熱分解炭素の結晶構造をラマン分光分析による評価を行った。その結果、乾留温度が高い条件で精製した試料で結晶性が良好になる傾向が、両方の試料において得られた。また黒鉛試料の結晶性も同時に分析し、木材・RDFともに黒鉛に比して遥かに結晶性が悪いことが確認された。 【II】熱分解炭素によるガス改質反応 Iで精製し結晶性の評価を済ませた熱分解炭素のガス改質反応について定量的に評価をするために、本年度は横型電気炉にQ-mass(四重極質量分析計)を組み合わせた実験装置を作製し、Real Timeでのガス発生挙動追跡を行うことが可能な環境を構築した。本装置を用いて、RDFを乾留した熱分解炭素について水蒸気との水性ガス反応の分析を行ったところ、乾留温度が高く良好な結晶性を示す試料は乾留温度が低いものに比して、H_2を筆頭にして水性ガス反応によるガス発生量が少なくなるという傾向が確認された。
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