金は一般的に化学的に不活性な元素であるが、メルカプト基(SH)やジスルフィド基(SS)やスルフィド基(RSR')のような硫黄を含む官能基とはAu-S結合による強い親和性を持つ。金を磁性酸化鉄表面に固定した金磁性複合ナノ粒子は、金を介して生体分子と結合できる可能性があり、磁場による簡便な分離回収操作も可能となることから、生体分子の単離やプロービング、また、金と酸化鉄という生体毒性が低い材料であることから、DDSやMRI造影剤などのような生体内利用にも期待できる。これらの応用に適する粒径は各用途で異なり、それぞれに最適化する必要がある。これまで放射線を用いたイオン還元法により金磁性複合ナノ粒子を合成してきたが、母体となる酸化鉄粒子には、市販の粒子を用いてきたため粒径の最適化が進んでいなかった。本研究では、酸化鉄ナノ粒子を共沈法で合成し、これを母体として放射線を用いて金を担持し複合ナノ粒子の合成を試みた。原料となる塩化鉄水溶液に、粒径制御のための水溶性高分子であるポリビニルアルコール(PVA)を溶解し、アンモニア水溶液を添加して酸化鉄ナノ粒子を調製した。さらにこの粒子分散液に金イオンを添加し、ガンマ線を照射して金磁性複合ナノ粒子を合成した。この粒子の溶液中での粒径を測定したところ、60〜200nmの範囲で合成条件により制御できることがわかった。また、アミノ酸吸着試験により生体分子の表面吸着特性を評価したところ、従来のものと同じように硫黄特異性があることがわかった。粒径を低く抑え、吸着活性を保っていることから、生体内利用にも期待できることが示された。
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