ポストゲノムにおける中心的課題の一つがシステムバイオロジーのアプローチ及び細胞シミュレーションによる統合的な生命システムの理解であり、このために研究対象を数学的・情報学的に記述する「モデリング」が不可欠となる。本研究では現在システムバイオロジー研究においてボトルネックとなっているこのモデリングを支援するためのソフトウェア環境を開発している。本年度、我々はまず、ゲノム情報をもとにして各種公共データベースを利用する事により大規模代謝モデルを自動生成するGEM Systemを改良した。これにより、精度を保ちつつ大幅な高速化が実現され、さらにCellDesignerソフトウェアにおいて、数百の要素からなる自動生成されたモデルを生化学パスウェイのコンテキストで可視化されるようにした。新システムによってシステムバイオロジーのモデル記述標準規格SBML形式で出力された最新のモデルは、データベースとして公開を開始している。また、本システムによって出力されるモデルに定量的な情報を付加するために、定量的なモデル及び生化学反応式のデータベースを構築し、現在までに1300あまりの定量的パラメータから成る750の酵素反応速度式を公開している(http://ism.iab.keio.ac.jp/)。本データベースを利用する事で、研究者はウェブ上で容易に必要な速度式を組み合わせてモデリングを行うことが可能である。以上により、定量的モデルを自動プロトタイピングするための基盤が整ったといえる。
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