平成20年度に実施した研究の成果として、まず、コネクターを介する細菌病原性調節ネットワークの全容解明に向け、新規コネクターのスクリーニングシステムの構築が行われた。サルモネラにおいて、雛形となる遺伝学的操作手法を確立し、個々の二成分制御系(約30対)の潜在的コネクターに対応したレポーター株(lacZ融合株)の概ね90%を構築した。また、これらの株を用いて、染色体ライブラリーからコネクターを濃縮し、同定する操作法を確立した。このシステマティックなスクリーニングにより、サルモネラから複数のコネクター様因子が単離され、現在それらの機能解析を行っている。また、コネクターの系統的機能解析を行うため、サルモネラゲノムにコードされる二成分制御系のレスポンスレギュレーターの概ね90%について欠損株の作成を行った。 上記のスクリーニングから、二成分制御系CpxA/CpxRを活性化する新規調節因子CacAが単離され、CpxR依存的CpxP遺伝子の活性化が確認された。さらに、二成分制御系PhoP/PhoQを活性化する新規調節因子PacAが単離され、PhoP依存的mgtA遺伝子の活性化が確認されている。これらの研究成果は、近く公表される。 つぎに、コネクターを利用した融合型ペプチドドラッグの開発に向けて基礎的データを得ている。細菌細胞内で発現させて、溶菌を誘導する融合コネクターペプチドPmrD-Magainin 2を得た。さらに、これをリードペプチドとして高機能誘導体に磨き上げる課程として、進化工学的最適化技術の開発が行われた。(PmrD-Magainin 2融合体発現プラスミド/野生型PmrD発現プラスミド)混合ライブラリーから進化工学的サイクルを3サイクル繰り返した結果、PmrD-Magainin 2融合体発現プラスミドが顕著に(600倍以上)濃縮された。これらの研究成果は、近く公表される。
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