汚染された土地を売買する際には完全浄化が求められることが多いため、汚染が発見された土地の多くが放置されている。この問題を解決するために、掘削を伴わない原位置浄化法による油成分濃度の低減手法を研究し、汚染現場に原位置浄化法を適用した際のリスク管理手法を検討した。 リスク管理手法については、現場の条件を考慮したリスク管理濃度を設定するために、土地用途や井戸の有無など、現場に特有の条件をフロー図から選択することによって、リスク管理濃度を設定する手法を、複合汚染や、汚染現場以外の不特定汚染源由来の大気中有機物濃度も考慮して考案し、リスク管理について検討した。 実験的検討では、定水位透水試験を応用した簡易な装置(直径約8cm、層厚29cm)を製作して、原位置浄化の効率予測のための土壌カラム実験を実施した。油汚染物質としてベンゼンを対象とし、その挙動を移流・分散の数式モデルを用いて解析した。その結果、簡易なカラム実験の結果でも、一次元の移流に三次元の拡散を考慮した解析解とよく一致し、良好なシミュレーションが可能であることが示せた。また、分散係数については、分子拡散係数では表現できず、本研究のような簡易であってもカラム実験が重要であることが示せた。 また、大阪府にある寝屋川市の河川水中から分離したベンゼン分解菌により、ベンゼン濃度0.88mg/Lおよび8.8mg/Lを2週間でほぼ100%を消失することができ、一次反応速度定数を求めた。この値を使用することにより、原位置バイオレメディエーションの浄化期間、浄化効率を推定することができる。 以上、リスク管理手法を提案したことと、実験により原位置浄化手法の簡易的な予測モデルを提示したことにより、原位置浄化法の設計手法を確立させ、リスクアセスメントによる管理の導入を促進することができると考えられる。
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