三種類のテトラブチルアンモニウム塩セミクラスレートハイドレートを研究対象として水素、窒素、メタン、二酸化炭素を加えた系の相平衡関係を測定し、混合ガス分離に適当なセミクラスレートハイドレートについて知見を得ることを目的とした。測定結果より、セミクラスレートハイドレートスラリーを混合ガス分離に利用する際には、ガスの分子径に応じた使い分けが必要であることを明らかにした。 臭化およびフッ化テトラブチルアンモニウム系では水素、窒素、二酸化炭素、メタンの順に分解温度が高くなった。一方、塩化テトラブチルアンモニウム系では水素、窒素、メタン、二酸化炭素の順に分解温度が高くなった。メタンと二酸化炭素の分解温度の逆転は、気体を包接できる篭の種類が臭化・フッ化テトラブチルアンモニウム系と塩化テトラブチルアンモニウム系の間で異なっているためと推測される。すなわち、二酸化炭素のような、やや分子径の大きいガスを包接・分離するためには塩化テトラブチルアンモニウム系を利用すると良い。なお、窒素、水素は分子径が小さすぎるため、いずれのセミクラスレートハイドレートにも適した篭がなく包接されにくいものと推測される。 臭化テトラブチルアンモニウム系とフッ化テトラブチルアンモニウム系を比較した場合、前者の方が各ガスを加えた場合の分解温度差が大きく、後者より分離性能が良くなる可能性が高い。ただし、フッ化テトラブチルアンモニウム十二酸化炭素系のみ、他の系とは異なり3.5MPaを境として加圧するほど分解温度が低下する。フッ化テトラブチルアンモニウム系では水素、窒素もあまり包接されない。したがって、3.5MPa以上の圧力条件で分離を行えばメタンを選択的に包接して分離することができるため、このような場合にはフッ化テトラブチルアンモニウム系を利用すると良い。
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