二年間の研究を通じて、教育制度改革とロシア社会の変化の関係性を明らかにした。とくに、(1)ロシア社会が当初に構想していた教育改革は、皇帝を中心として身分制度を維持しながら、各身分=職能の範囲での道徳的資質を高めようとする、有機的な世界観に基づくものであったこと、(2)そうした有機的秩序にもとづく発展という考え方を変化させ、身分よりも教育資格に重きを置くような教育制度に転換したのは、専門職者としての意識を高めた教員集団であったこと、という二点を重点的に明らかにした。 この研究は、ロシア社会が近代的に変容していく際の具体的なプロセスを明らかするとともに、その特徴も指摘することとなった。
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