1.2年目最終年度である本年度の実績としては、2つの研究項目「近代医療と民間医療の関係性の変容」と「カトリックと民衆信仰の関係性の変容」についての理論構築が挙げられる。近代医療と民間医療の関係性、またカトリックと民衆信仰との関係性について、それぞれの変容についての内外の文献資料の収集・精読と批判的検討から、支配的言説と被支配的言説との関係について近代的再編成プロセスという観点から新たにとらえなおし、一般理論化を行った。 2.次に、フィリピン共和国カピス州ロハス市において、5月、12月から1月、および9月の3度(のべ42日間)にわたって、近代医療と民間医療、カトリックと民衆信仰のそれぞれの関係性の変容に関する現地調査を実施した。調査対象は、ロハス市内で100名程度が現在活動中である呪医およびそのクライアントである。呪医に対しては、活動に関する参与観察と聞き取りを行い、支配的言説である近代医療とカトリックとの関係性の変容について明らかにした。クライアントに対しては、聞き取りを行い、社会的弱者の医療と宗教に関する意識調査を行った。 なお、以上の実績については、雑誌論文2件(うち査読有1件)、学会発表1件として成果が公開されている。
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