本研究は、勤務評定・成績に関わる資料(木簡・正倉院文書・六国史)を収集・分析し、中央官司・地方官衙・貴族邸宅等の経営構造とあわせて、日本古代国家の具体的な情報管理法を解明するものである。その一環として、六国史叙位記事のデータベースを作成し、8-10世紀の官人の昇進状況の復元を試みる。 1.日本古代官人叙位記データベースの構築 これまで作業を進めてきた、『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』の叙位記事の入力・校正を引き続き行った。入力項目は、官人名・叙位年月日・本位階・新位階・官職を基本とし、六国史の欠損部分については、『類聚国史』等での補充を行った。現況では叙位記事の入力だけであるが、今後は位階記事全般を反映させ、完備させる予定である。さらに「正倉院文書」・木簡等にみえる官人・叙位記事や位階関連記事の収集を行い、上記データに反映させることを試みた。 2.情報管理・伝達法の研究 長屋王家木簡を用いて、貴族邸宅における情報管理法について検討を行った。長屋王家木簡には、出先機関とみられる複数の施設より進上された、労働の成果や勤務評定の報告に関わるものが含まれている。平成19年度は「竹」の進上ならびに上日を報告した「木上司」の推定地候補地である奈良県香芝市・広陵町・明日香村飛鳥の現地調査を行なった。8世紀と現在における植生の変化を加味しても、両推定地とも竹の産出に耐えうる地域であることを確認した。以上の調査を踏まえた上で、輸送の形態、輸送時期、モノの性質(竹の形状・植生)など、木簡の文面に表示されない情報を複合し、当該地域の地勢を含め、出先機関の性質および実態を検討した。
|