本研究は、勤務評定・成績に関わる史料を収集・分析し、中央官司・地方官衙等の経営構造とあわせて、日本古代国家の具体的な情報管理法を解明するものである。その一環として、六国史叙位記事のデータベースを作成し、8-10世紀の官人の昇進状況の復元を試みた。 【1.日本古代官人叙位記事データベースの構築】『日本三代実録』の叙位記事の入力を完了、続いて校正を行った。さらに『大日本史料』第1編(24冊+補遺4冊)〜第2編(29冊)の叙位記事の入力を完了し、『公卿補任』寛平(889)年間以降の入力を進めている。六国史と比較することにより、9世紀以降の変質過程の考察が可能となった。上記データを用い、正月に追加で叙位を行う「加叙」の成立過程の検討を通じて、平安期における叙位儀礼の変質について解明、公表した(別記論文・『年中行事大辞典』吉川弘文館、2009)。 【2.情報管理・伝達法の研究】木簡導入に多大な影響を与えた韓国の出土木簡の検討が不可欠であることから、11月に韓国慶州の鴨雁池、月城跡等の実地調査を行い、慶州国立博物館にて木簡を実見した。また慶北大学校を訪問し、同大学の研究者と意見交流を行った。韓国木簡と比較すべく、類似点が指摘される7世紀の木簡の調査・検討を行った。9月に滋賀県安土考古博物館にて、滋賀県内で出土した木簡の観察、検討会への参加、ならびに実地調査を、2月に静岡県浜松市伊場遺跡を巡検し、同市博物館にて伊場木簡を実見した。 以上を踏まえ、日本古代の組織の構造の変化について、複合的に解明することができた。
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