日本国内の諸大学・研究機関の附属図書館には、数多くの和漢洋の貴重書が所蔵されている。こうした貴重書の書誌学的な調査と整備には高度の専門的な知識を要するが、日本の図書館では西洋書誌学の専門家の養成が立ち後れている。このため欧米の図書館に比すると、国内に所在がある洋書貴重書は整備が進んでおらず、所蔵の情報も公開されていないことが少なくない。 このような現状を打開するために、本研究では、国内における英国初期印刷本の所在調査と目録制作を行い、日本におけるイギリス文学関係の一次資料を研究するための環境整備を進めている。調査対象は、1470年代前半から16世紀末までの間に、イギリス国内で出版された印刷本ならびにイギリス国外で出版された英語作品である。 平成19年度の研究では、まず既刊の蔵書・書誌目録、各図書館のホームページやOPAC等を調べ、英国初期刊本を所蔵する図書館の簡易リスFを作成した。次にそのリストに基づき、関西方面の主要図書館と所属機関の慶慮義塾大学図書館などの所蔵本について、書誌情報・製本・書き込み・来歴の有無といった書誌学的な調査を行い、目録制作に必要となる各書物の書誌情報をまとめた。その結果、平成19年度に確認できた各館の英国初期刊本所蔵数は、現時点では次の通りである。 慶磨義塾大学図書館(40点)、早稲田大学図書館(10点)、神戸学院大学有瀬図書館(1点)、関西学院大学図書館(5点)、関西大学図書館(2点)、同志社大学文学部(2点)、京都大学附属図書館(1点)、京都大学経済学部図書室(2点)、京都産業大学図書館(2点)、京都外国語大学附属図書館(7点)、国際日本文化研究センター(2点)。
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