本研究の目的は、日本国内の大学・研究機関図書館が所蔵する英国初期印刷本の所在調査と目録制作を行うことで、国内における英文学関係の一次資料研究のための環境整備を行うことである。調査対象は、1470年代前半から16世紀末までの間に英国あるいは英語で出版された印刷本である。 本研究は平成19年度より開始しており、平成20年度は研究2年目の年であった。このため研究の主な内容は、昨年度の調査の続きである。具体的には、昨年度に用意した英国初期刊本を所蔵する国内図書館の簡易リストをさらに充実させた上で、所蔵図書館に実際に赴き、書物の著者名、書名、出版情報・製本・書き込み・来歴の有無といった点について、書物ごとにまとめた。平成20年度に調査を行ったのは次の大学図書館である(カッコ内の数字は各館で調査した書物数である)。日本福祉大学附属図書館(1)、広島経済大学図書館(6)、成城大学図書館(4)、明治大学図書館、筑波大学附属図書館(5)、上越教育大学附属図書館(1)、東北学院大学図書館(6)、九州大学附属図書館(2)、東京大学附属図書館(28)。 こうした一連の調査から、日本国内の大学・研究機関図書館におよそ200点もの英国初期刊本が所在することが初めて明らかとなった。 またこうした調査を進める一方で、慶應義塾図書館の所蔵本を用いた貴重書展示会を開催し、その解題目録を紀要に掲載したり、同館が所蔵する英国初期印刷本の目録一覧を論文としてまとめるという形で最終年度の成果の公表に努めた。
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