日露戦争時に作成・発行された以下の各メディアを調査し、戦争の視覚イメージの採集およびデータベース化を進めた。08年度は、それぞれの遺漏を補うとともに、未調査の対象へ調査と分析・考察の範囲を広げる。 1.タブロー現存作例が少なく、また視覚資料にも乏しいが、同時代の美術雑誌・画報雑誌、軍関係の公文書より作例を調査することができた。なかでも、海軍の委嘱を受け海戦画を制作した東城鉦太郎の活動については、集中的に調査を行った。 2.画報雑誌 日露戦争期に発行された画報雑誌の一覧を整備するとともに、各誌の個別調査を進めた。07年度は、以下の調査を中心に行った。 日露戦争実記、日露戦争写真画報(博文館)/日露戦争実記(育英舎)/日露交戦録(春陽堂)/征露戦報、征露写真画帖(実業之日本社)/軍国画報、帝国画報(冨山房)/戦時画報、近事画報、日露戦争外国画集(近事画報社)/征露図会、凱旋図会(東陽堂) 3.新聞 明治37年2月の開戦から、39年の凱旋期までを中心に、以下のような主要誌の調査を行った。都新聞/東京朝日新聞/読売新聞/平民新聞/大阪毎日新聞 4.絵葉書 カタログ等の記録がまとめられているもの、また代表者本人が収集したものを中心にデータベース化を進めた。08年度は、図書館・博物館等のコレクションを調査する予定である。 5.その他 調査の過程で、上記のメディア以外にも多様な視覚イメージに出会うことができた。目下、錦絵とパノラマについても同時に調査・採集を行っている。 6.戦争を描くということ 日露戦争に際しては、戦争をいかに描くか、またどのような表象が求められるかといった議論が交わされている。こうした戦争のイメージをめぐる言説についても、多様な文脈に配慮しつつ、分析を進めている。
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