平成20年度には、これまで行ってきた植民地朝鮮の転向についての研究を、日本の朝鮮史・思想史研究のなかに正当に位置づけるために努力した。また韓国の研究者との交流も行った。まず、「帝国と思想」研究会で報告した「書評:趙寛子『植民地朝鮮/帝国日本の文化連環--ナショナリズムと反復する植民地主義』(有志舎、2007年)」を整理して『社会科学』(同志社大学人文科学研究所)に発表した。そして朝鮮史研究会で報告した「書評:朴枝香・金哲・金一榮・李榮薫『解放前後史の再認識』」を整理して『言語文化』(同志社大学言語文化学会)に発表した。そして韓国政府の親日反民族行為真相究明委員会が開催したシンポジウムに出席し、「1930年代ハングル新聞の国際情勢認識--社会主義および全体主義関連記事を中心に」について報告した。以上の研究を通して、最近朝鮮半島の植民地経験をめぐって提起されている歴史修正主義の流れを牽制すると同時に、民族主義に基づいた韓国の「親日」研究と転向研究との疎通の可能性を模索した。
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