本研究は、社会組織の変容に関する文化人類学的調査過程において、調査者と地域住民による映像記録制作と「映像アーカイブ化」を通じて、地域連携をふまえた調査モデルづくりを目的としている。京都市静原における年中行事の調査過程で、特に地蔵盆と虫送り行事に対応する諸民族の年中行事に地域住民が関心を示すこととなった。その結果、調査者がネパール・カトマンズとスペイン・バレンシアの祭りを映像アーカイブ化することで調査者と地域住民、そして複数の地域を連環する形で映像による情報共有がなされた。当初の目的を超えて、地域住民自らが映像制作に関与することで、自身を客体化し他者への関心を促した本取り組みは、研究者と複数の調査地域の人々が、映像アーカイブ化による研究成果を連環的に相互利用できる有機的な調査モデルの形成が可能となることを示したといえる。
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