研究概要 |
イギリス、ジャポニスムと日本人との関連を考察するために,主にUniversity College London Libraryを利用してロンドンでの文献調査を行った。具体的には,1910年にロンドンで開催された日英博覧会と,同時期のロンドン演劇界に深く関わった劇作家、舞踏研究家の坪内士行(作家、坪内逍遙の息子)のロンドン滞在中の足跡を調査した。この調査によって,従来はあまり知られていなかった日英博覧会の実情や,日英博覧会に対する日本の知識人(主に当時渡英していた長谷川如是閑,長谷川天渓ら)の体験した文化的な葛藤,さらに坪内士行と舞台装置家ゴードン、クレイグとの交流から浮き彫りになるロンドンの前衛演劇と日本芸能の接点など,新たな論点を発見することが出来た。 加えて日本国内で20世紀初頭に刊行された関連図書、雑誌について文献の調査と収集を行った。その作業と並行して,『中央公論総目次』『現代日本文芸総覧』などを活用してデータベースを作成した。この日本人のジャポニスム受容に関するデータベースを活用して,通時的な観点からジャポニスム概念の変遷を考察した。その結果,19世紀から20世紀にかけての世紀末転換期に,ジャポニスム概念の質的な変化があったことを析出することが出来た。この点については,西南学院大学国際文化学部談話会(2008年3月)で「異邦のニッポン-西欧モダニズムと〈日本〉像の関係学、序説」と題する口頭発表を行い,現時点での研究の概要をまとめるとともに,発表後の質疑応答を通じて今後の研究の有益な指針を獲得することが出来た。 以上の研究内容については,平成20年度に成果を発表する予定である。
|