本研究は、19世紀から20世紀へと移行する世紀末転換期から、1945年の第二次世界大戦終結までの期間を対象として、ヨーロッパで形成されたジャポニスムの内実を検討しつつ、その上で、日本人がジャポニスムをいかに受け入れ、そして、いかなる日本イメージを再構築したのかを調査・考察した。 研究成果は大きく以下の4点にまとめられる。 (1) ロンドンでの文献調査 ロンドンの専門機関を利用して、1910年に開催された日英博覧会や、同時期のロンドン演劇界に深く関わった劇作家・舞踏研究家の坪内士行の足跡を調査し、1910年代の日英異文化交渉の一端を明らかにした。 (2) ジャポニスムに関する日本語文献の収集と分析 当時の日本人によるヨーロッパの旅行記やジャポニスム関連文献を収集することで、日露戦争(1904-1905年)前後から第二次世界大戦終結までの期間を対象として、通史的な観点から、ジャポニスム概念の質的な変化を析出した。 (3) 1910年代のイギリス・ジャポニスムと日本人についての考察 イギリスのジャポニスムと日本人の関係を探るために、特に1910年代に注目し、日英博覧会、演劇批評、文芸批評の観点から、日英異文化交渉の一面を明らかにした。具体的には、1910年代前後にイギリスを訪れた長谷川如是閑、坪内士行(作家・坪内逍遙の息子)、長谷川天渓らの異文化体験について考察を加えた。 (4) 1930年代~1940年代の日仏文化交流についての考察 1930年代から1940年代にかけてのパリにおける日本文学紹介や、異文化交渉の状況を調査した。具体的には、川路柳虹、松尾邦之助、坂本直道(坂本龍馬の末裔)、藤田嗣治について考察を加えた。
|