現代オントロジーについての基礎研究を遂行するにあたり、存在論的諸カテゴリーのなかでもとくに論争的な性格をもつ命題的対象カテゴリー(命題・事態・事実)に焦点をあて、それを「環境の理論」と「オーストリア哲学」という二つの観点から明らかにしようとした。前者の観点からは、知覚し行為する生きものが住まう環境世界を適切に記述するために、事態(states of affairs)を基本カテゴリーとするオントロジーが不可欠であるという主張を生態学的実在論ならびに状況意味論の立場から正当化することを試みた。後者の観点からは、「現代オントロジーの最大の源流は19世紀後半から20世紀初頭のオーストリアに存する」という大きなテーゼのもと、とりわけ命題的対象に関する現代の諸議論を、中欧を起源とする現代哲学の枠組みのなかで捉えかえすことを提案した。
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