研究課題
本年度は、まず南インド・アーンドラ地方に隣接するマハーラーシュトラ州ナグプール近郊にあるマンサール遺跡出土のいわゆる「マンサール・シヴァ」について、2008年6月30日〜7月1日両日英国・大英博物館にて開催されたシンポジウム"Recent Vakataka and Gupta Discoveries"において研究発表を行った。次に2009年2月16日〜2月28日にアーンドラ、タミル地方の仏教遺跡、初期ヒンドゥー教美術、アーンドラ、タミル地方が隣接する地域の馬蹄形寺院(5世紀以降)、ヒンドゥー教石窟寺院(マヘーンドラ時代:7世紀前半)の現地調査を実施した。今回の実地調査において以下の点が明らかとなった。まず、アーンドラ・プラデーシュ州においては近年発掘されたパニギリ遺跡の調査において、当遺跡は仏教遺跡ではあるが、出土品の中には丸彫神像が確認でき、特にこの神像は前年度調査したアマラーヴァティー考古博物館、また今回調査したアマラーヴァティーの州立博物館においても確認できたものである。その容姿はナーガールジュナコンダ等出土の蓮華手ヤクシャ、グントゥール、バウダシュリー考古博物館蔵、コンダモトゥル出土の英雄神といった仏教以外の尊像の姿と酷似している。このことからアーンドラ地方において仏像やヒンドゥー教の神像以外にも民間信仰による神像が多く制作されていたことが明らかとなった。また、ハイデラバード州政府考古局所蔵のケーサラグッタ出土の壺(Garbhapatra)には、ヒンドゥー教寺院建築の儀軌に登場するヴァストゥプルシャと5体の神像が表され、4〜5世紀のこの地のヒンドゥー教寺院建立の様相を物語る重要な資料であり、実際ケーサラグッタのラーマリンゲーシュヴァラ寺院には、露天に5世紀頃のリンガが多く安置され、当時のヒンドゥー教の祠堂や寺院の様相を知る上で、ケーサラグッタの上記の出土品・遺跡は極めて重要であり、これらの資料は4世紀以降のイクシュヴァーク朝以降のアーンドラ地方の宗教美術の展開を解明するための重要な手掛かりを提供してくれる。
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崇城大学芸術学部研究紀要 第2号(2008)
ページ: 69-90
『交流と伝統の視点から見た仏教美術の研究』(平成16〜19年度科学研究費補助金(基盤研究B)研究成果報告書
ページ: 41-66
Bakker, H. T. (ed. ) Mansar : The Discovery of Pravareshvara and Pravarapura Temple and Residense of the Vakataka King Pravarasena II, Proceedings of a symposium at the British Museum (E-Book)
ページ: 204-233
http://mansar.eldoc.ub.rug.nl/
http://mansar.eldoc.ub.rug.nl/root4/