本研究は、終末期患者の安楽死を正当化する可能性を模索したものである。とりわけ、安楽死を望む患者の同意は真意であり、そうでない場合の同意には瑕疵がある(ゆえに安楽死は正当化される)という有力な学説に取り組んだ。このことが証明できれば、安楽死の正当化は容易に導かれることになる。しかし結論として、そのような区別には根拠がないことが明らかになった。更に、このことによって安楽死正当化のためには更なる道筋を模索しなければならなくなったのだが、それについては国民の「死生観」にも由来する刑事政策が重要な役割を果たしうることを明らかにした。
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