平成20年度は、昨年度の成果に基づいて次の2点について検討した。まず1つ目は、昨年度調査した日本(北東北3県)とスウェーデンで公表されている木質バイオマスエネルギー事業に関する報告書や諸文献をさらに収集し、分析した内容や、ヒアリング調査を行った結果をもとに、国内外の自治体、事業者、地域住民の3主体が協働して現在実施中あるいは実施計画中の事業の現状と特徴を整理した。なお、整理した内容は、MicrosoftのExcelに次の8項目((1)使用している木質バイオマスの種類、(2)事業対象地域の特性、(3)事業体系(経営システム)、(4)事業関係者、(5)評価手法や項目、(6)事業に関わる法規制や政策、(7)検討課題、(8)将来の方向性)を設けて分類していることから、先進的な事業モデルやその特徴等が瞬時に検索できるデータベースとして利用することができる。 次に2つ目は、昨年度提示したバイオマス環境会計モデルに基づく情報システムモデルの構築と、1つ目の検討結果において先進的な事例を対象にしたシステムモデルの拡張可能性を検討した。まず、前者においては、飯田市で現在検討中の木質バイオマス発電事業プロセスを対象としたモデルを、KBSI社のEAWのビジネスモデリングソフトウェアとMicrosoftのExcelの表計算ソフトウェアを用いて構築するとともに、事業関係者(自治体、事業者、地域住民)が、そのシステムを用いて、事業のさらなる有効性および効率性を把握できる利用方法を検討した。次に、後者においては、青森県内で先進的に事業展開している藤崎町のバイオマスタウンを対象に、構築したシステムモデルの拡張可能性を提示した。ただし、このタウン事業の評価対象については、その事業で比較的進んでいる堆肥化事業に着目した。ここでは、堆肥化事業者が把握している財務データ(特にコストや収益のフローデータ)とともに、評価に不足しているデータ(発生したCO2等の環境負荷物質やその削減や抑制等に要したコストおよび削減効果のフローデータ)を各種文献等から補足してシステムモデルの構築を行っている。以上の研究では、各事業関係者が、木質バイオマスエネルギー事業の業績評価が可能なシステムモデルの構築方法だけではなく、そのモデルを用いて他の事業に展開できる方法についても提示することができた。
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