研究概要 |
社会的背景を概観し初等社会科と中等地理2000年版と2006年版を比較考察した。それとわが国との比較およびCME(公民道徳科)・教科書の検討も一部行った。例えば,初等社会科の結果は次の4つである。「1」:社会的背景から、未来への生き残りをかけた挑戦が政府や国民に求められ,それは二言語政策の義務化・成績振り分けなどの教育における多民族主義・実力主義・社会団結に関係している。また東アジア型教育の特徴にも概ね合致し、TSLN(1998)→TLLN(2004)といった一連の教育省の具体的な教育政策に繋がっている。「2」:2000年版から1・2年にも社会科が導入され、さらに2006年版でその系統性が内容構成において整理されてきた。その中で未来のシンガポールの生き残りをかけた国民統合の観点が基盤となり、世界的市民性に関する意義は含みながらも,地域社会の民族コミュニティにおける市民性や国民性を求める方向から、全般的に自国の歴史的・多文化的テーマが強調されてきた。「3」:2006年版では「概念」がスパイラル的に習得される中でTSLNの意義が組み込まれている。知識目標では,同心円的拡大から各学問的分野のキー概念を軸にして,1〜3年までの問いがHow形式,4〜6年まではWhy形式の理解となり、授業づくりを見通しやすい内容構成原理が指示された。技能目標は「過程と探求」「伝達」「参加」「批判的・創造的思考」の区別から系統的に指示された。態度価値目標は学習題材に規定されながらも、TSLNを引き継ぐ国民統合的側面が強く反映され、NEやCMEと繋がり合っている。以上から明確な構造性をもった理論的枠組みが整備されたと考えられる。「4」:シンガポール2006年版は、内容構成原理の基で各目標の組織性・系続性がシンプルで明確である。わが国と比較して、後の中等教育への見通し、学習過程における問いの在り方や各技能目標の発展性や具体性が参考となる。
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