本研究の目的は、キャリアの停滞を意味するキャリア・プラトー現象に注目し、1990年代以降、組織構造がフラット化するのに伴い、キャリア・プラトー現象の特徴およびインセンティブ構造が変化する可能性を明らかにすることにあった。そこで、本研究は、フラット型組織では、従来の昇進インセンティブがどのように変化するのかを、キャリア・プラトー現象の特徴の変化に着目し、実証することで明らかにすることに焦点を当てて、資料収集や分析を行ってきた。 本年度は、これまでに先行研究の検討を通じて構築した本研究の理論的枠組みが、実際に日本企業において妥当性を有しているか否かを実証し、論文としてまとめることに特に焦点をあて、研究を進めた。まず、(1)前年度から行っている定量的データに基づく分析をより精緻化し、本研究の分析枠組みの妥当性を実証した。次に、(2)理論的枠組みにおいて明らかにした事項が、実際に企業内で生じ得るのかという点を明らかにするために、インタビュー調査を実施し、定性的なデータを収集し、理論的枠組みの妥当性と適用できる範囲について確認することが出来た。そして、(1)と(2)の成果を、(3)博士論文(「組織フラット化に伴うインセンティブ・システムの再構築-キャリア・プラトー現象の観点から-」)として執筆し、本年度(2009年3月)神戸大学大学院経営学研究科から博士(経営学)の学位を授与されるに至った。これにより、前年度から行ってきた本研究を一つの形として結実させることができたといえる。今後は、本研究の理論枠組みを強固にするための実証や検証を更に蓄積し、より精緻化する予定である。
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