研究成果の総括:本研究は、第3次産業に分類される組織(以下、サービス組織)が行っている原価管理(cost management)の実態をアンケート調査研究により明らかにし、ベスト・プラクティスを発見することを目的としている。そのために本年度は、アンケートの質問票作成およびその基礎となる理論的研究を行った。 理論的研究:現代の管理会計論では、「サービス組織に適切な原価計算・原価管理は、活動基準原価計算・活動基準管理である」というコンセンサスが形成されている。しかしながら、そこにいたった背景・理由については、従来の研究では必ずしも明らかになっていない。そこで、「サービス組織の原価計算研究の史的展開-活動基準原価計算の受容と展開を中心に」という題目の理論的研究を行い、サービスの原価計算・原価管理は、そもそも製造業を想定して提案された活動基準原価計算のサービス組織への適用可能性に対する「気づき」と、経営学におけるサービス研究の中心領域であるサービス・マーケティングやサービス・マネジメントと呼ばれる研究分野の知見を基礎として受容され、展開していったことを明らかにした。この研究成果と関連して、2007年9月2日に日本会計研究学会で学会報告を行うとともに、同論題の投稿論文を執筆し、『會計』に投稿した。なお、同論文は近日中に公刊予定である。 質問票の作成:当年度に行った理論的研究、およびこれまで研究代表者が行ってきたサービス原価企画に関する理論的研究をふまえ、企業基本情報、サービス提供システムの属性、サービス開発段階の原価管理、サービス生産・販売段階の原価管理、という4部分からなる質問票の構成を確立した。そして質問項目について原案を作成し、現在は、2008年7月中旬に予定している本調査の実施に向けて推敲を重ねている。
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