本研究では、アフガニスタンの初等教育段階における障害児教育分野への国際協力支援に必要な基礎的資料を明示することを目的とし、平成19年度は、文献・資料および現地視察を通して同国の障害児初等教育の現状把握を行った。 まず、(1)同国政府の報告書、学術論文、(2)同国の学校、大学等、NGO等の資料、(3)他国による報告書、学術論文を、教育政策、盲・聾学校の教育、通常学校の教育、保健医療、リハビリテーション、地雷による障害の別に整理した。さらに、研究代表者は本務で同国に2ヶ月間滞在し、カブール教育大学特別支援教育学部教員および関連諸機関職員のインタビュー、盲学校視察およびインタビューにより資料を補完した。なお、当初計画の第2回派遣が治安上の問題で中止となり、現地での質問紙調査は実施できなかった。 同国の障害児初等教育の主な現状は次の通りである。(1)推定で全人口の2.7%(55万人から65万人)の障害者(児)がいる。(2)障害児の就学率は低いが、近年同国では特別支援教育への取り組みが進められ、教育省には就学前の重度の障害児の普通学校就学を支援するソースセンター設置(全国)に向けた動きがあり、初等教育におけるインクルージョン教育の推進を目指した取り粗みがなされている。(3)初等教育教師の特別支援教育の知識・技術の向上への支援が急務である。(4)障害の早期発見と早期療育の推進が必要である。(5)発達障害児に加え、PTSDなどの情緒的な困難を持つ児童や地雷被害等による中途障害児への支援ニーズがある。 本研究の意義と重要性は、本務のJICA連携融合事業アフガニスタン特殊教育強化プロジェクトを支える資料として本務を拡大・補完した点、また資料が今後のカブール教育大学特殊教育学部および初等教育教員養成に資する点にある。
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