本研究の目的は、アフガニスタンの初等教育段階における障害児教育分野への国際協力支援に必要な基礎的資料を明示するために、(1)先行研究及び統計資料を分析し、同国の障害児初等教育段階の基礎的資料を作成すること、(2)同国の障害児教育の支援に対する教師のニーズを調査し、現状を把握することであった。平成21年度は、まず文献による資料により得られたアフガニスタンにおける障害児教育に関する資料の分類と分析を引き続き行った。さらに、今年度および前年度までの文献調査、質的調査を踏まえて、アフガニスタンの特別支援教育分野への国際教育協力の実際について検討した。 文献研究では、前年度同様に資料を、教育政策、盲・聾学校の教育、通常学校の教育、保健医療、リハビリテーション、地雷による障害の別に整理した。 本務(筑波大学・JICA連携融合事業)のアフガニスタン教員養成短期大学への支援の一環として、同国全上にある教員養成短期大学へ導入予定である「特別支援教育概論」科目のシラバス作成支援を行い、その際に本文献研究の成果を参考にした。また本務において、平成21年6月に同国教員養成短期大学教員および関係者を日本へ招聘して2週間の本邦研修を実施した。その際、研究代表者は「日本の特別支援教育概論」、「自国と日本の特別支援教育の比較と課題」「日本の特別支援教育における授業研究」を研修参加者対象に講義し、研修参加者とアフガニスタンにおける特別支援教育のニーズや支援内容について、意見交換を行った。本研修では、特別支援学校や障害児者施設への見学を実施したが、研究代表者も見学へ同行し、見学後に参加者から日本の障害児者支援の実際への感想や、アフガニスタンの特別支援教育への適用可能性等についてインタビューを行った。 本研究の意義と重要性は、本務を支える資料として本務を拡大・補完した点、また資料が今後のカブール教育大学特殊教育学部および初等教育教員養成に資する点にあった。
|