本研究は、地域における女性の就業・育児支援環境の地域格差と女性の就業と家庭内での役割分担との関連を検討した。データは、女性の就業については2000年から2003年の「日本版General Social Surveys」(大阪商業大学比較地域研究所・東京大学社会科学研究所)、家事分担に関しては2006年の「男女の働き方と仕事と生活の調和に関する調査」(内閣府男女共同参画局)を用いた。本研究の成果は以下の点にまとめられる。(1)地域労働市場における女性の専門技術職率の高さと保育施設の充実は女性の就業と正の相関を持ち、個人的な要因による影響を統制した上でも、労働市場における女性の活躍度や保育施設の充実度が女性の就業を促進することが示された。(2)その一方で、女性の管理職率の高さは女性の就労を抑制することが示唆された。これら結果から、保育施設の充実や魅力ある就業環境の整備が女性の就労を促す上で重要な条件であることが示された。しかし、長時間労働など管理職になるために職場への強いコミットメントが要求される場合、単に管理職に多くの女性を登用する手法では全般的な女性の就業拡大につながらないことも示唆された。家庭内における家事分担については、(3)労働市場における女性の活躍度が高い地域では夫の家事参加率が高いが、(4)地域の子育て支援度は、夫の家事参加に有意な効果を持たないことが明らかになった。女性が活躍できる地域では、女性の経済的自立の可能性も高まるため、女性の家庭内での交渉力が高まることなどが推測される。今後、夫の家事参加を促進するためには、保育施設の充実など女性の育児負担軽減を主とした就業支援策のみならず、父親育児休業など直接的に男性の家事育児参加を促す政策も必要になると考えられる。
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