本研究では、日本の銀行業の近代化について、従来着目されることのなかったリスク・マネジメントの展開過程という観点から検討を行った。検討の結果、日本の銀行業の近代化は、明治維新期の大蔵省銀行検査を槓杆にして、増資金の裏付け、西洋式簿記の導入、銀行役員の高額報酬の削減、検査対応といったprimitive なレベルから進展し始め、貸出分散や増益方法の模索等へと発展し、大正期にはポートフォリオ・マネジメントや支店監督体制等が定着し始めるという形で進んだことが、国立銀行(第十五等)や普通銀行(第八十五等)の一次史料ベースで、具体的に明らかとなった。
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