本研究は日本と米国の経済動向を全要素生産性の変化から対比するものであり、要素代替の弾力性を利用して全要素生産性を資本生産性と労働生産性とに分割する分析手法に特徴がある。 19年度は1970〜2005年のマクロデータから、民間非農業部門を抽出して両国の比較を行った。全期間における推計に加え、20年度に計画している「1990年代を中心とした産業別生産性分析」への布石として、1989年を境に2期間に分割した推計を行い、1990年代以降の各国の特徴を見出した。 結果として、日本では、全期間を通じて量的に増加していた資本の生産性上昇率がマイナスであったこと、1990年代以降マイナスに転じた労働の伸び率を高い労働生産性が補完していたこと、が示された。米国では、1990年以降に全要素生産性が高まったが、それは労働・資本生産性の双方の寄与によるものであった。さらに、米国は2期間を通じて均斉成長率経路条件を満たしてきたことも見出された。日本では不均斉な成長がみられているため、労働生産性がさらに上昇しないと、均斉成長率が下がる方向での調整が生じる可能性が指摘される。 19年度の研究成果は、Ryuzo Sato and Tamaki Morita "Macro Dynamics and Labor-Saving Innovation: US vs. Japan"として、International Trade and Economic Dynamics-Essays in Memory of Koji Shimomura (Springer社)に収められ、2008年中に出版される予定である。
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