本研究は日本と米国の経済動向を全要素生産性の変化から対比するものであり、要素代替の弾力性を利用して全要素生産性を資本生産性と労働生産性とに分割する分析手法に特徴がある。前年度にマクロの生産性を推計し、日本では、全期間を通じて量的に増加していた資本の生産性上昇率がマイナスであったことが示されたが、産業別に分析した結果、特にマイナス傾向が強かった産業が、情報通信、不動産であり、これらの産業の非効率性が成長の足を引っ張る形となっていたことが確認された。耐久財製造業、卸・小売業、金融業では資本の生産性もプラスであったものの、その貢献は小さかった。米国は、マクロベースで日本より全要素生産性が高かったが、その牽引役となっていた産業は情報産業と非耐久財であり、どちらも労働と資本の生産性上昇率が共にプラスとして貢献していたことが分かった。なお、両国ともに資本生産性と労働生産性とに分割して推計したシミュレーション結果の方が、全要素生産性によるものより実績値に対する当てはまりが高く、生産性を分割して推計することの重要性が再確認された。 さらに、前年度の研究で米国が均斉成長率経路条件を満たしていることも見出されたことから、各国の均斉成長率条件についての比較も行った。その結果、日本が均斉成長経路に達するためには、米国より高い労働生産性成長率が必要であることが明らかとなった。 これらの結果については詳細な考察を加え、今後論文として公表する準備を進めているところである。
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