第一に、国際的には職業的側面だけでなく家庭生活や社会生活を含めた全体的視野で「成人生活への移行」をとらえる視点から知的障害のある青年の教育がとらえられてきたことを確認し、イギリスの知的障害者継続教育もその流れのなかにあることを確認した。一方で、就労自立を強調する政策的動向が知的障害者継続教育にも影響を与えており、そのような動向に対してカレッジのスタッフからは批判もあることを、訪英による調査等によって把握した。 第二に、知的障害者の移行支援システムの実態に関して、イギリスにおいてはコネクションズの役割が重視されてきているものの、実際には十分な役割を果たせてはいないことがうかがえた。継続教育カレッジにおける知的障害者教育とコネクションズ等の連携が図られてはいるが、継続教育後の進路保障は小さくない困難を抱えている。また、移行支援においては家族のあり方が大きく影響していることなどが把握できた。 第三に、知的障害者継続教育の移行支援機能に関して、基礎的スキル・職業的スキル・生活的スキル・社会的スキルを中心にしたカリキュラムが形成されてきた過程を明らかにした。また、継続教育カレッジにおいて、保育や木工などに関する職業実習などが取り組まれているものの、実際の卒業後の進路については困難が多い状況にあることを把握した。さらに、継続教育カレッジにおいて知的障害者の教育や移行支援が進められているだけでなく、特別学校において継続教育部門を設置する動きがあることが確認された。
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