第一に、コンピュータを用いた内容分析手法「計量テキスト分析」に関する基礎研究を行った。大量の日本語テキスト型データを対象として、事例的な解釈では発見が難しいデータの潜在的な構造を抽出するなど、量的方法の利点を活かした分析手法の提案と、実現に必要な独自ソフトウェアの開発を目指した。当該ソフトウェア「KH Coder」に関して、今年度は主に、統計解析の機能を追加する改良を行った。各種の統計解析の中でもテキスト型データの分析に適した手法を調査・検討した上で、階層的クラスター分析・多次元尺度構成法・対応分析(数量化III類)・共起ネットワークなどの多変量解析手法を選択した。これらの解析をKH Coder上で実行できるようになったことで、データ中でどのような語と語、概念と概念の間の関連が強かったのか、また、似通った文書のグループにはどのようなものがあったのかということを、多変量解析を通じて容易に探索できるようになった。なおKH Coderはインターネットを通じて無償で公開している。 第二に、計量テキスト分析の応用研究として、人々が情報を獲得・解釈・発信するプロセス、すなわち情報行動についての調査研究を行った。ここでは、テレビやインターネットの普及が進む中、新聞が人々の現実認識にどの程度の影響を及ぼしているのかという問題について、調査結果の理論的考察を行った。この成果は現在投稿中である。また、暴力に関連するコミュニケーションの探索的な調査を行い、その結果を兵庫県こころのケアセンター報告書に発表した。
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