本研究は賃金格差の発生要因を検討するため、労働市場以前の人的資本形成に着目する。特に、学校教育による人的資本形成メカニズムに焦点を絞り、マイクロデータ(学校、家計データ)を用い、教育の成果、教育制度が労働市場でのパフォーマンスに与える影響を実証的に明らかにする。本研究の意義は、教育に関する実証的証拠を示していくことで、経済理論の構築、政策提言、国際比較上の資料となりうる点である。 本年度は、教育の生産関数を推計することにより学校教育資源が生徒の教育の成果にどのような効果を与えているかを直接計測した。具体的には、関東・関西圏に存立する中高一貫校の学校別データを用い、入学時点の偏差値を制御した上で、授業時間、教員生徒比などの投入物が卒業時点のパフォーマンスに与える影響を分析した。分析結果によると、(1)卒業時点の成果は入学時点の偏差値でほとんどが説明できる、(2)学校投入資源のうち授業時間の引き上げ以外は明確な効果を持たないことが明らかとなった。 本研究の遂行上、電子データ化されていない学校別のマイクロデータを収集、入力するために研究補助を必要とした。また、大規模なデータセットを迅速に分析するために高性能PCおよびソフトウェアを必要とした。なお本研究は、学術論文にまとめられ現在査読付雑誌に投稿、審査中である。
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