研究概要 |
近年の管理会計研究においては,組織間関係のマネジメント問題についての研究が盛んに進められ,バイヤー、サプライヤー間の協働を支える組織間マネジメント、コントロールのあり方に関する議論が一つの論点となっている。しかしながら,既存研究の多くは「信頼」という漠然とした概念にその結論を求めているため,組織間マネジメントの実態について解明すべき点は未だ多く残されている。 わが国の製造業を対象とした質問票調査の結果,契約範囲を超えた柔軟で継続的な取引関係においても,機会主義的行動を抑制し,信頼関係を担保するようなコントロール、メカニズムが同時に併存していることを指摘した。このことは,組織間コントロールのメカニズムを有効に機能させることによって,信頼を形成し継続的な取引を実現していることを示唆している。また,サプライヤーに対するマネジメント、システムの特徴付けとして,「目標設定」や「財務情報(非財務情報)のモニタリング」,「調整活動」「改善提案」など伝統的なコントロールに類似した管理会計実務が組織の枠を越えて実践されていることを指摘した。さらに,こうした組織問コントロールと信頼との関係を規定する要因としてどのような取引を志向しているかといった視点からの分析を行った。 今後は,バイヤー、サプライヤー間のマネジメントに関して個別のシステムについて詳細な記述的、経験的研究や,ジョイントベンチャーや戦略的提携,ネットワーク型組織など多様な組織間関係において有用な管理会計の役割をさらに究明していく必要がある。
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