研究概要 |
本研究は,組織間関係に焦点を当てた管理会計研究として,組織間の統合的なマネジメント・システムの解明を目的とし,そのあり方および背景要因を探求した。その具体的な成果は以下の3点にまとめられる。(1)まず,前年度からの継続的な研究として,サプライヤーに対するマネジメント・システムの特徴を定量的に分析した。その結果,「目標設定」や「財務情報(非財務情報).のモニタリング」,「調整活動」「改善提案」など伝統的なコントロールに類似した管理会計実務が組織の枠を越えて実践されていることを指摘した。(2)次に,組織間マネジメントの問題として合弁事業を対象としたフィールド調査を実施した。組織間のマネジメント・システムの統合は,合弁時において乗り越えるべき1つの困難な課題としてあげられることが多い。本リサーチサイトにおいて,どのようなマネジメント・システムが構築され,どのような管理会計担当者の役割を明らかにすることを試みた。その成果については,研究資料を作成し研究報告を実施した。(3)最後に組織間管理会計研究に関する学術文献について継続的な文献研究を実施した。ここ数年間の間に当領域における研究論文が急速に増加・蓄積されたために,これをフォローするためである。具体的には,(1)国際的な学術雑誌を対象としてこれらの位置づけや今後の展望について検討した上で,(2)組織間マネジメントコントロールを中核として,その「構造」と「影響要因(背景要因)」および「成果」との関係,(3)経済学的な方法論(機能主義的な方法)と社会学的な方法論(構築主義的な方法)という複数の観点から今後さらなる展開の可能性があることを指摘し,その方向性を示唆した。なお,この成果は,国内の学会での報告および論文にて公表されている。
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