研究概要 |
本研究の目的は,中小企業における事業承継という経営課題に着目し,特に後継経営者が新たなリーダーとして組織運営を有効に行っていく上での課題と,後継経営者がリーダーとして成長する上での重要な要因を明らかにすることである.研究方法は主に中小企業の後継経営者に対するインタビュー調査と,同じく後継経営者を対象とした質問紙調査の結果を統計的に分析する調査によって構成された. 本研究の主な成果としては,主に中小企業において親族内事業承継が行われる揚合の特徴的な課題が明らかにされたことと,中小企業後継経営者がリーダーとして成長する上で重要な要因が明らかにされたことがある.まず,親子間で親族内事業承継が行われる場合の特徴的な課題であるが,親族間事業承継と非親族間事業承継と比較して明らかになったこととして,親族内事業承継の場合,親族であるために自由にものを言いやすく経営者同士による衝突が起こりやすいことがわかった.衝突することが想定されるために親側は株式の譲渡などの事業承継を先延ばしにしたり,子側がそれを不満として益々不信感を深めたりと,悪循環するケースも存在する. 次に,中小企業後継経営者がリーダーとして成長する上での要因としては,内省経験が重要であることが明らかになった.内省経験は,経営者としての積極性,部下活性化,ストレス,役割満足,自己効力感など様々な形でプラスの影響を後継経営者に及ぼしていた.また,内省経験の多い後継経営者は,修羅場と言えるような苦しい状況を経験しても,その際に自ら自身を振り返り,自己変革を通じて修羅場を切り抜けていることも事例調査による含意として示すことが出来た.
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