本研究は、高等教育交流が、大学組織及び管理運営に与える影響を、機会とリスクの観点から実証的に分析することを試みるものである。 本年度は、昨年度明らかにした、(1)欧州や北欧といった地域レベルでの高等教育交流の拡大とともに設置が進められた国際交流業務担当部署の位置づけが、「高等教育交流の大衆化」が一段落した2000年前後以降変化しつつあること、(2)その変化には、主として「普遍化」と「戦略化」という、一見、矛盾するようにも見える傾向がみられること、という二つの傾向について、関係者への面接調査等から検証するとともに、新たに策定されたフィンランドの高等教育国際化戦略について調査を行った。 また、近年、フィンランドにおいて進む大学改革(法人化及び財団化)の動向から、高等教育機関内部の意思決定の変化を明らかにすること、さらに、それらと高等教育の国際的潮流との関連性の検証を行うこと、について、文献調査及び訪問調査(面接調査)から明らかにすることを試みた。 その結果、昨年度の研究成果を踏まえて立てた仮説が概ね真であることが明らかになるとともに(とりわけ、学内における国際関係業務の普遍化・メインストリーム化は顕著であり、フィンランドの特徴となっている)、高等教育機関のみならず、国もまた、国際化に戦略的に取り組むべく、高等教育政策のみならず、高等教育制度並びに高等教育機関の再編に取り組んでいることが明らかになった。
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