研究概要 |
研究実施計画に基づき,本年度は7月末から8月初旬にかけて,スウェーデン・ストックホルムにある労働運動公文書・図書館を訪れ,ミュルダールに関する資料(Alva och Gunnar Myrdals arkiv)の調査に当たった.資料は膨大に残されているため,本研究課題に沿って調査対象を絞ることとし,1930年代におけるミュルダールの書簡を中心に調査した. 補助を受けた研究期間は前年度からの2年間であり,研究実施計画からすれば本年度は論文としての研究成果が問われる年に当たる.前年度からの研究の積み重ねとストックホルムでの資料入手により,目標としていた研究成果が現れつつある.それは,論文「1930年代スウェーデン人口問題におけるミュルダール--「消費の社会化」論の展開」をまとめあげたことである.投稿・査読審査を経て,『経済学史研究』(経済学史学会編集)の2008年6月号(第51巻第1号)に掲載される予定である.スウェーデン人口問題に関するほとんどの研究では,ミュルダール夫妻の人口論や活動が研究対象とされてきた.それに対し,この論文では,グンナー・ミュルダール個人の人口論に焦点を当て,その背後にある経済学的思考を明らかにし,「消費の社会化」が政策提言の特徴をなす概念であることを論じている.なお,この作成に際しては,本年度5月に開かれた経済学史学会第72回全国大会(於愛媛大学)にて研究発表を行い,有益なコメントを多く得ることができた.また,ストックホルムで収集してきた資料については,現在準備中の著書において大いに活用できるものであり,これも本研究の成果に含められる見通しである.
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